ALL RIGHT PRINTING

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ALL RIGHT PRINTING

 

 

ポスターや冊子をつくるのがデザインなのではなくて、

人の考え方を柔らかくしたり受け入れるとか、

そういう心を育てるのもデザインだと思っています。

 

デジタルの蔓延するこの現代、数百年前の活版印刷機をつかってデザインや印刷をする人たちがいる。

名前はALL RIGHT PRINTING。一度見たら忘れられないそのデザインや、一枚一枚印刷されたインクの匂いや活字によって凹んだ紙の表情は、忘れかけていたものを思い出させてくれるような懐かしい感じと共に、私たちの創作意欲を刺激する。

活版印刷とは活字を組み合わせた版を使う印刷で、凸版印刷のひとつである。紙に直接インクが乗るので色が濃く、プレスされることで凹凸のある仕上がりになる。(活版再生展冊子より抜粋)職人さんが手で書いた字がそのまま活字になることを、代表の高田唯さんは文字のひとつひとつに職人さんの気配を感じる、と言う。

場所は大田区・鵜の木。私たちはある晴れた平日の朝、のんびりと多摩川線にゆられてその工房に辿り着くと、私たちがそれまで目にしていたALL RIGHTのデザインたちがこの場所で生まれたことが腑に落ちた。もともと一つの家族からはじまったこのデザイン事務所のつくるものは、何故こんなにも私たちをワクワクさせるのだろうか。

質問に答えてくれたのは代表の高田さんと新しく加わったばかりの檜垣清丸さん、清丸さんはmicannというバンドのボーカルとしても活躍していて、音楽と活版印刷のコラボレーションがどんな化学反応を起こすのかとても楽しみだ。

 

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S: プロフィールとどういう経緯でこの活動をはじめたのか教えて下さい。

高田: 2007年に活版再生展というのがあって、このアートディレクションを担当することになったのが活版印刷に関わるきっかけで、機材を譲り受けるという前提で仕事を受けました。全然考えずに、僕も若かったので、やります!と活版印刷会に入っていったという感じなんですよね。そこで出会った色んな人たちの活動に参加してどんどん広がっていって、もともとグラフィックデザインをやっていたので活版と両立してやっていくことになりました。当時はまだ今みたいに活版印刷は全然主流じゃなくて、海外からの印刷物をみて、なんとなく波が来ている感じはありました。まあ雑貨屋さんとかでも活版印刷のカードが出回り始めた状況で、色んなところでワークショップをしたり、職人さんに教えてもらいながらもらった機械を生かそうと活動してきました。ただそれでは収入も少なかったのでデザインで稼ぎつつ、とにかくデザインをやっていかないと活版もつぶれてしまう、と必死でした。それで徐々にやっていく中で技術も経験もいろいろできるようになってきて、金銭的にもちゃんとまわるようになってきて、ここからがどうなっていくか、新人(清丸さん)も入ってきてどうなっていくか、面白いところだと思っています。

 

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S: ALL RIGHTの名前の由来はなんですか?

高:なんとなくです。(即答)深い意味はなくて、今から考えるとすごいいい名前だったんと思うんですが。たまたまです。名前を決めなきゃまずい時にポンと出てきた名前でした。

S: 覚えやすくて、何か良さそうだな()という感じがしますよね。高田さんの言葉で活版印刷ってなんですか?

高:普段コンピューターや電子的な通信をやっている中で、こっちはやっぱり時間も手間もお金もかかって、大変なことがごっそりあります。でも今は何でも便利になって行こうとしているし、情報の交換も直接会うことがなくなって、手紙が電話、電話がメールのようにどんどん省略されている。そんな中で活版印刷は近くにいないと分からない、むしろ機械の発する音など言葉じゃ確認できないということもあって、昔ながらの阿吽の呼吸のコミュニケーションがここにはあって、それが今ここに生きていてちょっとほっとするというか、安く早くとにかく急ぐ時代ではなく、のんびりした時間がここにはあって、それがなんか安心しますね。東京や、渋谷なんかにいると特にそう思うかもしれないんですけど、仕事なんですけど、緑に中にいるような、安心感があるというか、腑に落ちるものがある、というのが活版のいいところですね。最初はやっぱり凹んでいたりかすれていたり、刷り上がったものに対しての良し悪しが活版の良さというのはもちろんだったんですけど、やっていくとおじいちゃんたちとのやりとりや、どういう人生を歩んできたりとか。なかなかないじゃないですか、ご高齢の方といっしょに仕事をするというのは。そういう中で、良いところや不都合なところももちろんありますけど、両方が見れるという意味では活版印刷があってよかったなと思います。デザインばっかりやっていたらどうなっていたんだろうと。最早考えられないですけど、少し立ち止まって考えさせてくれるものがあると安定というか、心が安心しますよね。場所もよかったと思いますし、鵜の木という東京の中でものんびりした場所で。活版印刷機もキャッチーで、人が集まってくるマスコットみたいな。みんな機械を見たいと言ってくれて、見たらキャーとなるし、嬉しいなと思いますね。あとはデザインもずっとやってきてみて、常に考えさせられることが多くて、それが逆に僕はいいなと思いますね。エンブレムの問題もありますけど、常に先も考えなくちゃいけないし、反対に活版印刷としてはこれ以上進化しようがないんですね、先がないというか。オフセット印刷はどんどん進化していますが。その中で、この限られた中で工夫をするのがテーマになってくるとは思います。考えないとつまらないし、デザインと活版印刷のバランスがとても良いと思います。便利だし何でも揃っている中で、何を選ぶか、どう工夫するかで色んな道が出来る。

 

デザインっていい職業

 

S: 今後やりたいことはなんですか?

: 若い人がやってくれればいいと思っています。もちろんなにか思いつけばやりますが、僕はもういろいろやってきたつもりですし、これからのやり方もあると思います。デザイナーが活版印刷をやるのは基本セットの近いもの同士だけど、ミュージシャンが活版印刷をやるってめちゃくちゃおもしろいことだと思うので、ミュージックと活版をどういう風に清丸がつなげるのか。いったらミュージックなんですよ、結構耳を使うんですね。目の次に耳で音を聞いて、何か変な音するな、とか。リズムもあるので、僕は何気に音楽だとも思っているんですが、それは清丸が独自の解釈をしてどういう風に使っていくのかは気になるところです。そこが未来かもしれないですし、楽しみなところでもあるし、またさらにそのあとの人たちはどうなるのか。僕がどうこうというより、みんながどうしていくの、そういう人を許せる会社ににしたい。色んなことをやっちゃうというか、杉田は料理がすごい得意でケータリングをやっていて、僕も教員もやっちゃっているんですが。そういうのもありだし、会社という概念をとっぱらいたいですし、こうでなきゃいけないというのは基本ないと思っていて、そういうチームでいたいというか、お互いを認め合う、そりが合わないところですらも一回引き受けるというか、つっぱねずに受け入れる姿勢や態度を大切にしていきたいと思っています。なのでどんどん面白くなっていくしかないと思っています。ポスターや冊子をつくるのがデザインなのではなくて、人の考え方を柔らかくしたり受け入れるとか、そういう心を育てるのもデザインだと思っています。ちょっとデザインって意味がどんどん膨らんできているので、新しく解釈していきたいと思います。そういう意味ではデザインっていい職業だなって思って、未来しかないですね

 

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頂いたALL RIGHT読本の最後にこんな言葉があった。僕たちが大切にしているのは、それぞれが、自分のやり方で生きて行くことを肯定し合うことだ。誰かが作った仕組みは、自分がより良く変えてもいいし、必要だと思うなら、今はまだ無い方法を一緒に生み出せばいい。活版印刷という一見敷居の高いものが、ALL RIGHTの手にかかるとやってみたい!と思えるものになるのは、何でも受け入れようという姿勢と、職人さんから受け継がれた一文字一文字への思いやその魅力を大切にし続けることにあるんじゃないだろうか。


ALL RIGHT PRINTING

http://allrightprinting.jp